「アンドリューNDR114」 1999年/アメリカ/2時間11分
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 ロビン・ウィリアムズは、コメディもシリアスも演じられる、素晴らしい俳優です。昨年、「パッチ・アダムス」という作品においても、その両方の分野を見事に演じ、1998年度イカデミー主演男優賞に選んだほどでした。今回も、その演技力を活かし、大変、感動的な作品を生み出しました。

 これは、近未来の物語です。郊外に住むマーティン家に、ノース・アム・ロボティックス社より、大きな荷物が届けられます。その中に入っていたのは、最新型のロボットでした。これは、父親のリチャード(サム・ニール)が、家族のために、家事全般の仕事をこなすために購入したものです。ロボットは、アンドリュー(ロビン・ウィリアムズ)と名付けられ、料理・掃除・簡単な修繕・子供の遊び相手や見張りを命ぜられます。しかし、長女のグレースは、この家事ロボットを馬鹿にし、「ロボットは人間の命令に服従しなければならない」という原則を利用して、アンドリューを2階に呼び出し、窓から飛び降りるように命じます。アンドリューは、命ぜられるままに飛び降り、大きなダメージを負います。この事件をきっかけに、父親のリチャードは、アンドリューを人間同様に扱うことを、家族に宣言するのでした。

 最初から、アンドリューに好意をもち、友達や家族のように親しみを感じていたのは、次女のアマンダでした。ある日のこと、浜辺で遊んでいたときに、アマンダは宝物にしている、小さなガラス製の馬をアンドリューに見せます。しかし、その馬は、アンドリューの金属の指から滑り落ち、岩にあたって砕けてしまいます。「アンドリューなんか大嫌い!」というアマンダの声に、アンドリューは、その夜、流木を使って、木彫りの馬の人形を作り、アマンダにプレゼントします。彼女の喜ぶ顔をみたアンドリューは、さらに優美な木彫りの動物たちを創作するようになります。それを見たリチャードは、アンドリューがただの機械ではなく、創造性や個性をもった存在であることに確信を抱きます。

 時は流れても、アンドリューはその創造性に磨きをかけ、大人になったアマンダとの交流も、相変わらず続いていました。それは、彼女が結婚し、子供を産み、年老いたとしても、変わることはありませんでした。しかし、成長し、変わっていく家族に対して、ずっと変わらないままでいるアンドリューは、例え、リチャードが家族同様と認めていたにしても、アンドリューは、一人孤独であることを思い知らされるばかりでした。

 ある日のこと、アンドリューは、人間との決定的な違いからくる孤独感から解放されるためには、自ら人間のような姿になればいいのかもしれない、と思い始めます。その為には、ただ人間らしいボディにするだけではなく、部品を人工臓器に変えなければなりません。アンドリューには、一つの大きな望みを持っていました。それは、アマンダの孫娘ポーシャに抱く愛情からくる、彼女に触れて感じること、彼女と同じように笑い、同じように涙を流すことでした。その為に、アンドリューは、いくつかの重大な決心をするのです。

 映画の前半では、ロビン・ウィリアムズは、ロボットに扮しており、本人の姿は、全く表に出ません。それならば、わざわざ、ロボット・スーツを着用して演技するのは、ロビン・ウィリアムズでなく、代役を起用してもよいはずでした。その点を、ロビン・ウィリアムズは、自ら演じることで、後半の演出との違和感を感じさせないようにしました。ロボット・スーツは、16キログラムもの重さがあったといいます。

 アンドリューは、個性や感情を持ち始め、少しずつ、人間そのものに惹かれていきます。彼は、優しい心を持ち、人間よりも人間らしさの溢れたロボットでした。ロボットであるアンドリューは、最終的には200年も生き続けました。本当は、もっと長生きすることもできたでしょう。しかし、彼は、敢えて体内部品を人工臓器に変えたり、痛みを感じるように改良したり、寿命に似た仕掛けを組み入れたりすることで、アップグレードどころか、ダウングレードさせていくのです。アンドリューにとっては、完璧なロボットであるよりも、不完全な人間にこそ、憧れていました。アンドリューの追いかけていくものは、どことなく、人間の忘れかけていた何かを探し出してくれるような、そんな印象を与えてくれます。

 最後に、エンディングテーマは、セリーヌ・ディオンの「ゼン・ユー・ルック・アット・ミー」。「タイタニック」で、大ヒットとなった、「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」に勝るとも劣らない、素晴らしいバラードです。エンディングともマッチし、感動をより高めてくれます。

監督
 クリス・コロンバス

キャスト
 アンドリュー         ロビン・ウィリアムズ
 リトル・ミス/ポーシャ    エンベス・デイビッツ
 サー             サム・ニール
 ルパート・バーンズ      オリバー・プラット
 ガラテア・ロボティック/人間 キルスティン・ウォーレン
 マム             ウェンデイ・クルーソン
 リトル・ミス7歳       ハリー・ケイト・アイゼンバーグ
 ミス9歳           リンジー・リザーマン
 ミス             アンジェラ・ランディス
 ビル・ファインゴールド    ジョン・マイケル・ヒギンズ
 ロイド            ブラッドリー・ウィットフォード
 ロイド10歳         イゴー・フィラー

参考
 ・株式会社インプレス MOVIE Watch
 ・「アンドリューNDR114」公式サイト
 ・「アンドリューNDR114」パンフレット