「13ウォーリアーズ」 1999年/アメリカ/1時間42分
自己評価ランキング B−

 「13ウォーリアーズ」は、総製作費130億円もの巨費を投じて完成された、ファンタジー物語です。「7人の侍」の西洋版とも言われる作品ですが、残念ながら、「7人の侍」を鑑賞したことのない私には、それと比較することは出来ません。

 この作品は、最初のストーリー展開が早く、13人の戦士が集うまでに、さしたる時間はかかりません。ある北方の未開地に大使として左遷させられたイブン(アントニオ・バンデラス)は、途中、盗賊に遭遇するも、北方の民によって、間一髪のところを救われます。そして、彼らの大使となるイブンは、その王の後継者と目されるブルヴァイ(ウラジミール・クリッヒ)のもとを訪ねます。それも束の間のこと、とある国の使いの者が、自国の危急存亡の危機を告げに、ブルヴァイの前に現れます。なんでも、霧の中から現れる伝説の魔物に、国は脅かされているというのです。そこで、年老いた巫女の占いにより、13人の戦士たちが、その国を救うために出発します。その中には、何故かイブンも含まれていたのです。

 その13人の戦士達は、次のように、それぞれ特徴が異なっています。伝説の勇者ブルヴァイ、弓使いの名手レセル、怪力の大男ヘルブデン、華麗なる演奏家ウィース、博識の戦術家ハルガ、寡黙な戦士エドグス、神話を司る男スケルド、沈着冷静な革命家ワグナー、王宮の騎士ロネス、怒りのケンカ殺法ホウラク、謎の少年ハタフ、陽気な策略家ハージャー、そして最後に、13人目の戦士イブン。ただ、13人もいると、1時間42分という短い時間では、全員を識別することは出来ません。この物語では、4度の死闘を繰り広げますが、最初の戦いで死んだ2人の戦士は、誰と誰だったのか、分かりませんでした。第一、戦士達の名前は覚えられず、そもそも名前と顔と特徴が一致しないのです。

 果たして、13人もの戦士を必要とするだけの意味はあったのでしょうか? 結局、13人のうち、数名しか、私は覚えられず、もう少し、個々の能力を活かせるような作品にはならなかったのかと、期待を裏切られた気持ちでいっぱいです。

 しかし、4度に渡って繰り広げられる戦闘シーンは、圧巻です。撮影時の照明も、できるだけ、松明だけの灯りに頼り、より臨場感を醸し出しています。確かに、戦闘シーンは、全体的に夜の闇に覆われ、暗いイメージはあるものの、戦闘における緊張感をうまく盛り立てていると感じました。あとは、観客への盛り上げ方に気を配って欲しかったです。この作品に比べると、「ジャンヌ・ダルク」における、ミラ・ジョヴォヴィッチによって兵士を鼓舞させるシーンの数々は、そのまま、映画を鑑賞する私達にも、力を漲(みなぎ)させるものがありました。一方、13人の戦士達は、割りと冷静に戦いを挑み、戦いに勝利したときも、勝鬨(かちどき)をあげることもなく、観客を興奮させるようなことはありませんでした。どちらかというと、戦いに何とか勝利し、もう疲れて何も言えないような状況という感じです。それはそれで、現実的ではあるのですが…。

 さて、この物語の主役は、なんといっても13人目の戦士イブンを演じた、アントニオ・バンデラスです。前作、「マスク・オブ・ゾロ」でも、華麗な剣劇を披露してくれました。今回もそれが活かされたのではないでしょうか? また、「ヒート」や「ジャッカル」のダイアン・ベノーラも出演。ただし、それほどインパクトを与えるような役どころでは無かったようです。

 私としては、この作品の中で、何よりも一押ししたいのは、ブルヴァイを演じた、ウラジミール・クリッヒです。チェコスロバキア出身の彼は、本作で勇気溢れるリーダー役を演じ、イブン役のアントニオ・バンデラスよりも、輝いて見えました。193センチという長身も、その伝説の勇者に相応しい資質だと思います。何より、低くて渋い声は、堂々とした英雄そのもので、憧れを感じさせるような格好良さがありました。私としては、バンデラスには失礼ですが、作品における彼の存在感をもう少し高めてもらいたかったと感じました。3ヶ国語を流暢に操るという、今後の彼の活躍に期待したいです。

 最後に、「13ウォーリアーズ」は、ファンタジー作品の中でも、魔法やドラゴンといった、空想的なものは、一切登場せず、純粋に剣と剣の戦いという作風に仕上がっています。しかし、そのことによる物足りなさは感じさせません。この作品には、どことなく空想的な雰囲気を常に漂わせているのです。それだけ、この作品に中世北欧的なリアリティを求めているのでしょう。あとは、戦略や戦術への深み、13人の戦士達の役割や性格などに力を入れれば、歴史に残るような作品になっていたのではないかと思うと、本当に残念でなりません。それを考えると、少し、130億円は勿体無い感じも致します。ちなみに、この原作を書いたのは、「ER緊急救命室」「ジュラシックパーク」などを大ヒットさせた、ベストセラー作家のマイケル・クライトンです。その彼が、今、製作に携わっているのは、2001年公開予定の「ジュラシックパーク3」です。さて、どんな物語に仕上がるのか、今から、とても楽しみです。

監督
 ジョン・マクティアナン

キャスト
 アントニオ・バンデラス  アハメッド・イブン・ファハラン
 ダイアン・ベノーラ    女王ウィロウ
 オマー・シャリフ     メルチシデク
 デニス・ストーイ     ハージャー
 ウラジミール・クリッヒ  ブルヴァイ
 リチャード・ブレマー   スケルド
 トニー・カラン      ウィース
 ミーシャ・ハウザーマン  レセル
 ネイル・マフィン     ロネス
 アスビョルン・リイス   ハルガ
 クライヴ・ラッセル    ヘルフダン
 ダニエル・サウザン    エドグス
 オリバー・スヴェイナル  ハタフ
 アルビー・ウッディントン ホウラク
 ジョン・デ・サンティス  ラグナー

参考
 ・株式会社インプレス MOVIE Watch
 ・「13ウォーリアーズ」公式サイト
 ・「13ウォーリアーズ」パンフレット