「エントラップメント」　１９９９年／アメリカ／１時間５３分
自己評価ランキング　Ｂ＋

　美術品をこよなく愛し、まるで趣味のように綿密な作戦を練って、鮮やかに仕事をやり遂げるプロ中のプロ、マック。そんなマックを大胆かつおいしい計画で挑発するジンの正体は？　互いに強く惹かれながら、ジンの甘い誘惑を泥棒のルールのもとにはねのけ、あくまで仕事のパートナーであろうとするマック。レンブラントから始まった二人の冒険は、中国の秘宝である黄金のマスク、コンピュータの２０００年問題にからんだ銀行預金の強奪作戦へとエスカレートし、ニューヨークからロンドン、クアラルンプールへと展開していく。

《ストーリー》は、「エントラップメント」の公式サイトから、無断転載しております。

　皮肉なことに、「スターウォーズ／エピソード１」よりも、スリリングで緊張感あふれる作品だと感じた。展示されている美術品の周辺には、これでもか、というぐらいの罠が張り巡らされているというのに、２人のプロにかかれば、いとも容易く、掻い潜られてしまう。その一つ一つの罠をクリアしていくシーンに、鑑賞する者は、興奮を与えてくれる。まるで、自分がその罠を脱するかのように。

　彼らのようなプロにもなると、事前に綿密な訓練を積み、命に関わる仕事に備える。防犯用のレーザービームを潜り抜けるために、隠れ家の中で、用意した柱に赤い糸を張り、その糸に振れないよう、しかも目隠しで練習をする。また、美術品を展示してある建物の構造を、徹底的に調べ上げ、潜入方法だけでなく、脱出方法も研究する。ただ、潜入・脱出するためのルートを立てるのではなく、利用できるものは、とことん利用する。最初、何のための訓練なのか、さっぱり分からなかったことも、いざ、作戦を決行し、その理由が明かされると、その知的ともいえる手段に、ため息すら漏れる。まるで、「キャッツ・アイ」張りの技術である。ただ、ショーン・コネリー演じるマックと、キャサリン・ゼタ＝ジョーンズ演じるジンとの人間関係が複雑で、見終わった後も、その人間関係がすっきりとしない。最後には、どんでん返しも加わり、最初の二人に対する印象は、見事に覆されてしまう。それでも、罠をテーマにしたアクション作品として割り切ってしまえば、個人的にも高い評価を与えるに値する。罠に対抗するために、ハイテク装置だけに頼るのではなく、数々の知恵を巡らして、解決していく。機械に助けられて罠を掻い潜ったところでは、何の驚きも感じられないが、機械はあくまでサポート的な手段にとどめて、建物の中にあるものや、手持ちの道具を生かし、様々に考え抜かれた末の行動には、本当に度肝を抜かれる。

　そして何よりも、キャスティングが最高である。ショーン・コネリーとキャサリン・ゼタ＝ジョーンズの二人以外には、考えられない作品である。ショーン・コネリーは、ニコラス・ケイジと共演した「ザ・ロック」以来のファンである。かなりの高齢なのに、男性からみても、ダンディーである。そして、「マスク・オブ・ゾロ」に出演していた、キャサリン・ゼタ＝ジョーンズ。名前は知らなくても、「ラックス　スーパーリッチ」のＣＭに出演していたと言えば、思い出す人もいるだろう。ただ美しいだけでなく、数々のアクションもこなせる女優である。「マスク・オブ・ゾロ」でも、見事なフェンシングさばきを披露してくれたし、今作においても、「キャッツ・アイ」のようなスタイルと、そのアクションは、とても印象に残った。

　最後に、この作品のタイトル「エントラップメント」は、「罠」という意味である。映画を見終わった後、このタイトルについて振りかえってみると、いろんな面においての「罠」があったことを思い知らされる。美術品に仕掛けられた罠、そして、泥棒を捕まえるための罠…。誰が誰に罠を仕掛けていたのか、罠を仕掛けていたつもりが…。ここから先は、自分の目で確かめてもらいたい。

監督
　ジョン･アミエル

キャスト
　ショーン・コネリー　　　　　　マック
　キャサリン・ゼタ・ジョーンズ　ジン
　ビング・レイムス　　　　　　　ティボドー
　ウィル・パットン　　　　　　　クルーズ
　モーリー・チェイキン　　　　　コンラッド・グリーン
　ケビン・マクナリー　　　　　　ハース
　テリー・オニール　　　　　　　クイン
　マーダブ・シャーマ　　　　　　警備主任
　ティム・ポッター　　　　　　　ミレニアム・マン

参考
　・株式会社インプレス　MOVIE Watch
　・「エントラップメント」公式サイト
　・「エントラップメント」パンフレット