「ハムナプトラ 失われた砂漠の都」 1999年/アメリカ/2時間5分
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《ストーリー》
 ハムナプトラ。それは、今から3000年も昔に古代エジプトで栄えた、砂漠の奥地にある「死者の都」のことである。そこには、王家の墓があり、宝も眠っていたが、突如として、砂の下へと消えてしまった伝説の都でもあった。

 当時、邪悪な力を持つ魔術師として恐れられていた、高僧イムホテップ(アーノルド・ボスルー)は、セティ王(アーロン・イパーレ)の愛人アナクスナムン(パトリシア・ヴェラスケス)との禁じられた恋を暴かれ、追い詰められた二人はとっさに王を殺害。その許されざる罪を犯したために、イムホテップは、生きたまま埋められるという極刑を受けてしまう。それは、死を迎える前の状態で永遠に生き続けなければならないという究極の呪い「ホムダイ」の刑であった。全身に包帯を巻かれて埋葬された彼の肉体は、年月と共に次第に腐敗していく。そしてそれは数千年もの間、誰の目にも触れることなく、暗い砂漠の下に静かに横たわることとなった。だが、邪悪なイムホテップの魂は、いつかは再起を図り、地上を復讐と呪いで覆い尽くす機会を待ち続けていた…。

 時は1923年、エジプト全土を旅する宝探しの探検家たちは、古代の地図から失われた都の場所を導きだし、サハラ砂漠でハムナプトラの廃墟、つまり古代の墓を発見する。そこには、未盗掘のまま石棺に入った完全な状態のミイラも眠っていた。彼らは宝の在り処と古代エジプトの謎を解くという、特別な鍵のみ開けられる古文書を見つけだし、そこに記された呪文を読む。だが古文書は2つあり、彼らは違った古文書、つまり邪悪な魂を封印していた古文書を読み上げてしまい、イムホテップの魂を現代に復活させてしまう。だが彼らは、その本当の恐ろしさをこの時、まだ何も知らなかったのである。

 前評判などを見ていると、「インディー・ジョーンズ」のようなアドベンチャー系の作品として評されていたので、随分と期待して鑑賞した割りには、見終わった後の覚めやらぬ興奮もなく、全米で首位をとった作品にしては、期待外れであった。どちらかといえば、ロマン系の強い作品というよりは、ホラー色の濃さを感じた。そういう意味では、「インディー・ジョーンズ」よりも、ホラー独特の緊張感を味わえた。そんなこともあって、見終わった後は、緊張のあまり、本当に疲れてしまった。悪い言い方をすれば、いかにも鑑賞者を驚かしてやろう、という場面や要素を感じたので、つい身構えてしまい、ちょっとしたコメディのシーンも、素直に笑えなかった。とても勿体無い。

 でも、コンピュータグラフィックスは、世界でも最高水準を誇るILMが手がけているだけあって、迫力を感じた。なんといっても、砂漠を舞台にしているだけあって、砂の視覚効果は、見事なものであった。砂漠に浮かぶ人面像や、砂嵐。本当に邪悪な魔法を使っているようだった。ほかにも、肉食のスカラベという甲虫は、とても気持ち悪かった。大量に駆け寄ってくるシーンもいくつかあって、見終わった後は、あまりの気持ち悪さに、食欲も失せてしまう程だった。

 邪悪な魔術師イムホテップは、ミイラから人間へと、少しずつ生気を取り戻していく。一見ゾンビのような腐敗したこのミイラも、もちろんCGを駆使したもので、見事な出来映えである。しかし、あまり探検家を襲うようなシーンもなく、恐怖感に欠けた。魔法を使っているときは、強大な力というものを見せつけられたが、主人公との肉弾戦になると、変哲のないアクションシーンでしかなかった。

 主人公とヒロインによるラブロマンスについては、こういった作品では、よくあるパターンにあてはまっていた。一緒に映画鑑賞した友達の一人「こばりん」は、「大体、最初から予想はついていたけどネ」と感想を漏らしていた。同感である。まぁ、ラブロマンスに主点を置いた作品ではないと思うので、あまり深くつっこむつもりはないけども、もう一癖二癖は欲しいところだった。

 場内でも、驚きのあまり、体を動かしてしまう人もいたし(私もその一人)、随所に見せてくれるコメディでは、ちらほらと笑い声も聞こえた。イムホテップに仕えるミイラたちとの戦闘シーンでは、至るところで笑いを誘うシーンもあって、むしろ、楽しい戦闘場面であった。謎解きや、地下迷路におけるトラップの遭遇シーンよりも、一見の価値がある。でも、個人的には、アドベンチャーらしく、鑑賞者も一緒になって考えさせるような謎解きや、危険な罠の数々を、披露してもらいたかった。それでこそはじめて、「インディージョーンズ」を超えた、というレッテルを貼ることが認められるのではなかろうか?

 出演者については、主だったキャストは初のご対面だったが、脇役陣にちらほらと懐かしい顔ぶれがあった。「ジュマンジ」で一人二役をこなし、「タイタニック」にも出演していたジョナサン・ハイドや、「スターゲイト」で長老役を演じていたエリック・アヴァリ。おそらく、主演のブレンダン・フレイザーや、レイチェル・ワイズは、この作品を期に、躍進していくことだろう。イムホテップ役のアーノルド・ボスルーも、個人的に気になる俳優である。悪役だけでなく、正義の主人公役も演じられる力を持っていると思うので、大いに期待したい。

監督
 スティーブン・ソマーズ

キャスト
 ブレンダン・フレイザー  リック・オコーネル役
 レイチェル・ワイズ    エヴリン役
 ジョン・ハナ       ジョナサン役
 ケビン・J・オコナー   ベニー役
 アーノルド・ボスルー   イムホテップ役
 ジョナサン・ハイド    エジプト学者役
 オーディド・フェール   アーデス・ベイ役
 オミッド・ジャリリ    刑務所所長役
 エリック・アヴァリ    博物館長役
 アーロン・イパーレ    セティ1世役
 パトリシア・ヴェラスケス アナクスナムン役
 スティーブン・ダンハム  ヘンダーソン役
 コーリー・ジョンソン   ダニエルズ役
 タック・ワトキンス    バーンズ役

参考
 ・株式会社インプレス MOVIE Watch
 ・「ハムナプトラ」公式サイト
 ・「ハムナプトラ」パンフレット