「ヴァイラス」 1999年/アメリカ/1時間40分
自己評価ランキング C

《ストーリー》
 ロシアの科学調査船「アカデミック・ウラディスラフ・ボルコフ」号は、南太平洋上で、ロシアの宇宙ステーションのミールと交信していた。そのとき、暗黒の宇宙の彼方から飛来した、巨大なエネルギー体がミールを襲った。それは、電磁波で形成された知的生命体だった。そのエネルギー体は、ミールの電子システムに侵入し、パラボラアンテナを通じて、更に宇宙からボルコフ号の船内の電子回路へと侵入した。

 それから数日後、同じく南太平洋上で、「シー・スター」号は台風に襲われていた。乗組員たちは、沈没を避けるために、ボルコフ号へと近づいた。しかし、ボルコフ号は乗組員たちのSOSに応じるどころか、誰一人の姿さえ見当たらなかった。船長のエバートン(ドナルド・サザーランド)を始め、航海士のキット(ジェイミー・リー・カーティス)、エンジニアのベイカー(ウィリアム・ボールドウィン)、スクィーキー(フリオ・オスカル・メチョーソ)、海軍に6年間在籍していたリッチー(シャーマン・オーガスタス)、マオリ族のヒコ(クリフ・カーティス)、臆病者のウッズ(マーシャル・ベル)ら乗組員一行は、不審を感じながらも、船に乗り移った。

 だが、この船には、ミールを襲ったあのエネルギー体が潜んでいた。ベイカーとスクィーキーが船の電源を入れた途端、エネルギー体は活動を再開し、船内では異常事態が続発する。このエネルギー体の目的は何なのか? そして、乗組員たちは、無事、この船から脱出することができるのか?

 「ヴァイラス」のスペルは、「VIRUS」。そう、ウイルスのことである。最近では、ウイルスと聞くと、人体に宿る病原体だけでなく、コンピュータを脅かすソフトウェアも意味するようになった。これだけ説明すれば、ストーリーを読んだだけで、このウイルスは何を差しているのか、大体の予想がつくことだと思う。私自身もそう思っていた。でも、本当の意味でのウイルスの正体は、この映画を観てのお楽しみとしておきたい。

 これまでのSFホラーと違うのは、今作のエイリアンは、化け物のような姿形をしたものではなく、知性をもった電磁波というものである。これは、意外とも思えるし、まさしく現代的だともいえる。今やハイテク時代となった現代では、携帯電話、パソコン、電子レンジなど、身近な電化製品から目に見えない電磁波が、周囲に飛び交っている。この電磁波は人体に悪影響を及ぼすとされ、ガン、白血病、脳腫瘍を引き起こすもとにもなっていると言われている。「ヴァイラス」の公式サイトにある説明によると、普通、生活居住地域の磁場の安全基準は0.1ミリガウスであるとされている。しかし、テレビやパソコンのモニターは、画面から50センチの距離で、既に30ミリガウスに達するという。携帯電話は100ミリガウス。コピー機は10センチの距離で100ミリガウス、10ワットの蛍光灯は5センチで6ミリガウス、ホット・カーペットは190ミリガウス、電気カミソリは皮膚に接しているので、15,000ミリガウスもあるという。1.2ミリガウス以上で、小児白血病は6倍発生するという説もあるらしい。また、ガン細胞に電磁波を24時間照射すると、ガン細胞の増殖スピードは24倍に、電力会社の施設で60ヘルツの電磁波に接する人の脳腫瘍の発生率は13倍になったという報告もあるとか…。この他、自殺の増加や、免疫力の低下、流産、精力減退、自閉症なども電磁波が関係しているのではないか、といわれている。電磁波は、屋内でも携帯電話を使用することが出来るように、壁をも突き抜け、電子レンジのように、物体に変化を生じさせる。この電磁波に生命や知性を兼ね備えれば、人間にとってどれだけの脅威であるか、想像するだに恐ろしい。

 でも、いざ鑑賞してみると、それだけSFの題材に適したテーマを与えられながら、満足できるだけのインパクトには欠け、期待を見事に外された。観終わった人は、B級映画という印象を誰もが残すことだろう。電磁波を敵にした作品のはずなのに、振り返ってみても、機械仕掛けな敵ばかりを相手にしていたような感じがしてならない。電磁波は一体、どこにいったんだろう?

 あと、敵とコンタクトを図るために、パソコンを使って対話するシーンは、「スフィア」のそれとまったく一緒で、その点においても、評価を下げる一因になった。ここは、もう一工夫しておく必要があった。

 実は、この「ヴァイラス」で、映画鑑賞を趣味にもってから、ちょうど80作品目の鑑賞となる。それだけに、これまで数多くの出演者を見てきたはずなのに、今回の出演者は、誰一人として知らない人たちばかりだった。出演者の一人、クリフ・カーティスは、「6デイズ7ナイツ」にも出演していたはずなのだが、どうしても思い出せない。…というわけで、キャストについては、今回、何も語れないのが残念である。

 監督、ジョン・ブルーノは、ビジュアルエフェクト(視覚効果)・アーチストとして、ハリウッドを代表する存在で、「アビス」でアカデミー賞を受賞し、そのほか、「ゴーストバスターズ」「E.T.」「スターウォーズ/ジェダイの復讐」「ポルターガイスト」「ターミネーター2」と、有名な作品の数々に携わってきた人である。視覚効果には、妥協しない作品作りを心がけてきたことだと思うが、残念ながら脚本は、まだまだ練りが足らなかった。次回作に期待したい。

監督
 ジョン・ブルーノ

キャスト
 ジェイミー・リー・カーティス キット・フォスター役
 ウィリアム・ボールドウィン  スティーブ・ベイカー役
 ドナルド・サザーランド    エバートン船長役
 ジョアンナ・パクラ      ナディア役
 マーシャル・ベル       ウッズ役
 フリオ・オスカル・メチョーソ スクィーキー役
 シャーマン・オーガスタス   リッチー役
 クリフ・カーティス      ヒコ役

参考
 ・株式会社インプレス MOVIE Watch
 ・「ヴァイラス」公式サイト
 ・「ヴァイラス」パンフレット