「RONIN」 1998年/アメリカ/2時間2分
自己評価ランキング B−

《ストーリー》
 一つのミッションを遂行するため、パリには、各界のプロフェッショナル6人が集結した。サム(ロバート・デ・ニーロ)は、一見、平凡なバーに用心深く入っていくと、閉店時間を少し過ぎているにも関わらず、僅かな客が残っていた。バーテンダーの一人、ディエドラ(ナターシャ・マケルホーン)は、彼の合言葉を確認すると、その場にいた一同は裏口へと向かい、用意してあったバンに乗り込んだ。車は、とある大きな倉庫の中へと入り、国際的な秘密工作チームは、全員、結集する。彼らは、平和とともに、職・組織を失った各国の元諜報部員たちであった。冷戦時代においては、第一戦で暗躍していただけに、彼らの中には、元CIAやKGBの一員を思わせる者や、政府を震撼させるような機密を握っている者さえいた。彼らは、その冷戦終結後、自分たちの進むべき道、生き抜くための道を探しつづけていた。かつてのスパイ達は、今やただ、金の為、生き残る為、そして自分自身のプライドを守り続ける為に、謎の人物からの依頼を受ける。

 このチームのリーダーとなる、戦略と武器に優れた手腕をもつサム、装備の調達だけでなく、自らも巧みに武器を操るフランス人のヴァンサン(ジャン・レノ)、小太りではあるが、最高級のドライビング・テクニックを誇るアメリカ人のラリー(スキップ・サダス)、銃器の専門家で、不敵な表情のイギリス人スペンス(ショーン・ビーン)、ハイテク(電子工学)のスペシャリストでドイツ人のグレゴー(ステラン・スカルスゲールド)、そして、女性ながら鋭い目つきのディエドラは、彼らを雇った謎の依頼人との唯一の連絡係として、チームに指令を与える。

 その彼らに与えられた任務とは、厳重に警備されたブリーフケースを、無傷で盗み出すことであった。しかし、それ以上のことは全て謎であった。メンバーの互いの素性や目的はもちろんのこと、彼らの雇い主のことも、人物像さえ分からない。そもそも、ブリーフケースの中には、一体どんな秘密が隠されているのか?… 彼らは、そんな不安と不信感の中で、最も危険なミッションを開始する。

 「RONIN」とは、日本語の「浪人」のことである。日本の封建制度では、武士階級にある侍たちは、命をかけて主人である領主を守り、刀で武装していた。領主が殺され、仕える者を失うと、侍は国をさすらい、用心棒として雇われるか、盗賊になるしかなかった。主を失った彼らは、「侍」とは呼ばれず、「浪人」と呼ばれた。映画における「RONIN」は、金で雇われる、もはや職・組織を失った元スパイ達のことで、刀ではなく、銃器を武装したスペシャリストである。パリに集結した、それぞれの分野におけるプロたちは、自分の才能を活かして、ひとつのミッションを開始する。

 なんといっても、こういうスパイものには、めっぽう弱い私である。「ミッション・インポッシブル」にしてもそうだった。プランナー(戦略)のプロ、コーディネーター(装備調達)のプロ、ウェポンスペシャリスト(銃器)のプロ、ハイテク(電子工学)のプロ、ドライバー(運転)のプロと、互いに扱う分野が異なるのも興味深い。ただ、映画を見終わって感じたのは、これだけ、はっきりと専門は異なるはずなのに、個人個人の能力に差を感じられなかったことだ。ドライバーのラリーでなくても、サムやヴァンサンは、プロ並みに運転する。ウェポンスペシャリストのスペンスがいなくても、みんな、多数を相手に様々な武器を過分なく扱っている。そこに不満を感じた。もっと、それぞれ個々の能力を引き出すような活躍を見たかった。偵察のプロでしか出来ないこと、プロのドライバーだからこそできるテクニック、サバイバルの達人の知識や経験など。

 それでも、中盤のアクションシーンには興奮した。なかでも、カーチェイス・アクションは、この作品の売りといってもいい。この間は、ほとんど会話もなく、車の走る騒音しか聞こえない。むしろその方が、見ている人にとっては、緊張感を倍増させる。逆走シーンを見たときは、映画ではありがちなパターンを感じたけども、デジタル合成いっさいなしのカーチェイスだけに、充分、迫力があった。

 だが、この後はさっぱりだった。中盤に力を注ぎすぎたのか、終盤のアクションは、どうしても劣った感を否めない。クライマックスとしての本来の醍醐味を感じさせないまま、エンディングを迎えてしまったので、全体としての興奮も冷めてしまう。もう少しアクションの構成に気を配って欲しかった。それともう一つ評価を悪くした点は、人物関係にある。次から次へと不審人物、謎の人物、黒幕らしき人物が現れては消えるので、誰が誰だか分からないまま、映画は終わってしまう。もう一度、映画を見なければ、作品をより理解することはできない。

 もともと、「RONIN」に興味をもったのは、設定だけでなく、2人の主役にも影響している。サムを演じるロバート・デ・ニーロは、アカデミー賞を2度も受賞した、ハリウッドを代表するスターである。彼の作品を映画館で初めて観たのは、「ヒート」。アル・パチーノと共演した作品で、このときから、ロバート・デ・ニーロのかっこ良さに憧れてしまった。そして、もう一人、ヴァンサンを演じるジャン・レノは、「レオン」以来の大ファンである。「ミッション・インポッシブル」「GODZILLA」では、彼の活躍はあまりなかったけども、今作では、「レオン」程ではないにしろ、かなりアピールしているので、とても良かった。

 この他、「エビータ」や、「007 トゥモロー・ネバー・ダイ」でジェームス・ボンドの敵役を演じていた、ジョナサン・プライスや、こちらは同じ007でも、「ゴールデンアイ」に出演していたショーン・ビーンなど、私にとっては懐かしい顔ぶれである。この中でも、ディエドラ役のナターシャ・マケルホーンの演技力に興味をもった。近年では、「デビル」「トゥルーマン・ショー」に出演していた彼女であるが、残念ながら、この2作品は鑑賞していないので、今作、初めてお目に掛かる。なんといっても、鋭い目つきでミステリアスな表情は、ディエドラ役には最適な人選だったと思う。今度はうってかわって、チャーミングな役柄を演じてほしい。個人的に、今後、期待の女優である。

監督
 ジョン・フランケンハイマー

キャスト
 ロバート・デ・ニーロ    サム役
 ジャン・レノ        ヴァンサン役
 ナターシャ・マケルホーン  ディエドラ役
 ジョナサン・プライス    シーマス役
 ショーン・ビーン      スペンス役
 スキップ・サダス      ラリー役
 ステラン・スカルスゲールド グレゴー役

参考
 ・株式会社インプレス MOVIE Watch
 ・「RONIN」パンフレット