「プラクティカル・マジック」 1998年/アメリカ/1時間44分
自己評価ランキング D+

《ストーリー》
 サリー(サンドラ・ブロック)とジリアン(ニコール・キッドマン)は、仲の良い姉妹。二人は、海の近くにある古い屋敷で育った。彼女達には、両親はいない。住んでいるのは、彼女ら姉妹と、叔母のジェット(ダイアン・ウィースト)とフランシス(ストッカード・チャニング)の4人。そして、このオーウェンズ一家は、プラクティカル・マジック(実用的な魔術)を使える能力を、代々受け継いできた魔女達なのであった。その代わり、「彼女たちと恋に落ちた男性は、必ず若くして死んでしまう」という呪いもまた、受け継がれてきた。サリーとジリアンの父親もその呪いを避けることは出来なかった。その後、愛する夫を失った母も、悲しみのあまりに死んでしまった。

 サリーは、堅実で何事にも慎重に行動する姉で、幼い頃、「私は恋なんて一生しない。町の人たちが魔法と呼ぶ力も絶対に使わない」と心に誓う。しかし、そう言いながらも、彼女は密かに、自分を守ってくれる理想の男性の姿を、ノートに書きつづっていた。「パンケーキを裏返す人、星の形の好きな人、片方がグリーン、もう片方がブルーの眼を持つ人」と…。

 一方、妹のジリアンの性格は、姉のサリーとは対照的。彼女は幼い頃、姉に向かって、「早く恋がしたいわ」とつぶやいていた。そんなジリアンは、セクシーな女性に成長した後、ボーイフレンドとともに家を飛び出してしまう。しかし、二人は離れて暮らしていても、この世で唯一分かり合える存在であることを、互いに信じていた。ジリアンが家出する際にも二人は、お互いを助け合うことを、心に誓っていた。

 やがて、サリーのもとに、一本の電話が入る。それは、恋人から暴力を受けているという、ジリアンからの助けを求める電話だった。サリーは、妹を助けるために彼女のもとへ駆けつけ、決して使わないと誓った力を、妹のために使うことになる…。

 この映画を見ようと思ったきっかけは、誰にでも予想がつくくらい単純なものである。サンドラ・ブロックとニコール・キッドマンといえば、ハリウッドを代表する大女優である。その2人が初共演するとなれば、否応にも、どんな作品なのか気になってしまう。でも、作品の内容としては、あまり面白いとはいえなかった。二人の演技に問題があるわけではない。もちろん、二人とも美しかった。問題なのは、脚本とストーリー展開にあった。

 まず、序盤のストーリー展開が早い。姉のサリーが幸せな家庭を築いたかと思うと、あっという間に、その夫を失っていく過程は、10分もないくらい短い。この作品として、その部分はあまり重要なシーンではないのは分かるけど、早く本題に入ろうと、急いでいるような感じがしてならない。それでは、夫を失ったサリーの気持ちが、観客には伝わらない。本当に夫を愛していたのかどうかも、よく分からないまま、本題に入ってしまうのだ。そもそも、二人の結ばれるきっかけも、ある意味、不純を感じる。これでは、二人の愛の絆を窺い知ることは出来ないのでは…?

 中盤、サリーは、妹ジリアンから、助けを求める電話を受け取る。このあたりからは、作品も本題に入ったためか、序盤のテンポに比べて、軽薄な展開を感じさせずに、楽しめた。しかし、物語の結末は、私の自己評価をさらに下げる結果となった。何故ならば、姉妹は、事故とはいえ、人を誤って殺してしまったというのにも関わらず、何の罪にも問われないまま、ハッピーエンドを迎えてしまうからだ。これは、ちょっと問題なのでは? 私としては、自己評価こそは低いけども、ニコラス・ケイジ主演の「スネーク・アイズ」の結末の方が、しっかりしていると思う。主人公は、麻薬の密売人から金を巻き上げる、あくどい奴だが、旧友の犯罪に加担も見過ごすこともせず、真っ向から彼の犯罪を正したというのに、その功績で主人公の罪がチャラになることもなく、逆に逮捕されるという結末で締めくくられているので、こちらの方が、筋も通っているし、納得もできる。アメリカでは、「プラクティカル・マジック」のこの結末に、問題は提起されなかったのだろうか?

 主演の一人、サンドラ・ブロックは、1994年に大ヒットした、「スピード」のアニー役をきっかけに、スター女優の仲間入りを果たした。私は、この「スピード」を見ることが出来なかったので、続編の「スピード2」は、しっかりと鑑賞させてもらったが、あまり面白くはなかった。先日、テレビで放送していた「ザ・インターネット」も、彼女が主役を務めていた。彼女の次回作は、ベン・アフレック共演の「Foeces of Nature」。

 もう一人の主演、ニコール・キッドマンは、トム・クルーズの奥さん。「ピースメーカー」では、ジョージ・クルーニーと共演している。この作品は、個人的にも評判は割りと良かった。次回作は、スタンリー・キューブリック監督の「Eyes Wide Shut」にて、旦那さんと共演する。

 他の出演者で知っているのは、ロバート・レッドフォード監督の「モンタナの風に抱かれて」に出演していた、ダイアン・ウィースト。彼女は、「プラクティカル・マジック」で叔母のジェット役をつとめている。映画を見ていて、「どっかで見たことある人だなぁ」と、ずっと心に引っかかっていたが、後からパンフレットを見て、思い出した。

監督
 グリフィン・ダン

キャスト
 サンドラ・ブロック      サリー・オーウェンズ役
 ニコール・キッドマン     ジリアン・オーウェンズ役
 ストッカード・チャニング   フランシス役
 ダイアン・ウィースト     ジェット役
 ゴーラン・ビスンジック    ジミー・アンジェロフ役
 エイダン・クイン       ゲイリー・ハレット役
 エバン・レイチェル・ウッド  カイリー役
 アレクサンドラ・アートリップ アントニア役
 マーク・フォイアスタイン   マイケル役
 カプリス・ベネディッティ   マリア・オーウェンズ役

参考
 ・株式会社インプレス MOVIE Watch
 ・「プラクティカル・マジック」公式サイト
 ・「プラクティカル・マジック」パンフレット