F1 Grand Prix 第9戦 フランス

 全17戦のF1グランプリも、今回で第9戦目となり、折り返しを迎えました。第9戦は、再び、ヨーロッパへと舞台を移し、フランス、マニクール・サーキットで開催されました。パリから南へ250キロメートルに位置するこのサーキットは、1周4.251キロメートル。これを、72周します。総走行距離は、305.886キロメートルです。

 スターティンググリッドは、ポールポジションにミハエル・シューマッハー、フロントロウには、クルサード。クルサードは、ここ最近、ハッキネンよりも、予選・決勝と、優れた成績を残し、ミハエル・シューマッハーを脅かす存在となりました。ミハエル・シューマッハー自身、彼がいる限り、決して、今シーズンは、楽に勝ち進めることは出来ないだろう、と語っています。3番手には、ミハエル・シューマッハーのチームメイト、バリチェロ。ハッキネンは4番手と、少し出遅れました。2年連続のワールドチャンピョンとしては、決勝戦で、是非、良い結果を残したいところです。

 決勝戦のスタートでは、特に混乱もなく、ミハエル・シューマッハーは、安定した走りをキープし、バリチェロは、クルサードを交わして、2位に浮上することで、早くも、フェラーリのワン・ツー体勢を築きあげます。マクラーレン勢は、バリチェロに抑えられ、ミハエル・シューマッハーに勝負を挑むことは出来ません。クルサードは3位、ハッキネンは4位と、序盤戦の勢力図では、フェラーリに優勢な状況となりました。また、BARホンダのヴィルヌーヴは、今回も、ロケットスタートを決め、5位に浮上。ホンダエンジンのスタートの良さを、彼は、連戦を通じて、証明しています。

 22周目までは、上位陣の動きに変化はありませんでしたが、ついに、クルサードは、このサーキット唯一の抜きどころとされている、アデレイドヘアピンにて、バリチェロを交わし、2番手に浮上。ミハエル・シューマッハーに対して、猛追撃を仕掛けます。このとき、ミハエル・シューマッハーとの差は、7秒余りでした。

 24周目、トップグループの中で、まず、1回目のピットインを開始したのは、ハッキネンでした。7秒5と、短いピットワークで、コースに復帰します。一方、ミハエル・シューマッハーは、8秒8。こちらも順調な作業でした。その次に、ピットインしたのは、クルサードとバリチェロ。2台は同時にピットインします。フェラーリ陣営としては、コース上で交わされたクルサードを、このピット作業を利用して、再び、前に出ようという作戦でした。しかし、ピットインする前、クルサードとバリチェロには、僅かながらの開きがあり、クルサードは7秒3、バリチェロは6秒6と、タイヤ交換と燃料再給油では、バリチェロはクルサードよりも早く済ませたものの、それでも、前には出られませんでした。クルサードはかろうじて、2位の座をキープします。

 レース中盤に差しかかり、とうとうクルサードは、約7秒あった、ミハエル・シューマッハーとの差を、0.5秒にまで詰め寄り、標的をロックオンすることに成功します。そして34周目に、まず、最初の攻撃を仕掛けます。クルサードは、アデレイドヘアピンにて、アウト側から、ミハエル・シューマッハーを交わそうとしますが、ここは、ミハエル・シューマッハーも抑えます。お互いに、ホイールとホイールを接触させながらも、アクシデントに至らないのは、互いに限界ギリギリのところまでを見極めているからこそ、可能なのだといえます。まさしく、このバトルこそが、F1グランプリの醍醐味ともいえるでしょう。そして、40周目、遂にクルサードは、またしても、アデレイドヘアピンにて、今度はイン側をついて、ミハエル・シューマッハーと勝負し、サイド・バイ・サイドという、ハラハラした激戦の末、マクラーレンは、フェラーリよりも見事な立ち上がりを見せ、クルサードは、自らの実力で、トップへ踊り出ることに成功します。

 この後、各チームは、2回目のピット作業に取り掛かります。まずは、ミハエル・シューマッハーとハッキネンの同時ピットインより始まります。ミハエル・シューマッハーは7秒3、対して、ハッキネンは8秒9と遅れ、ハッキネンは、ピットワークを利用して、ミハエル・シューマッハーの前に出ることは出来ませんでした。次に、クルサードもピットイン。7秒9という短い時間でタイヤ交換と燃料再給油を済ませ、ミハエル・シューマッハーに、先を越されることなく、コースに復帰します。理論計算上では、8秒5のタイムでも、シューマッハーより、前に出ることは可能だったとされていましたから、マクラーレンのスタッフは、大事なときに、きちんと仕事をこなしたといえます。

 レースも終盤戦に入り、55周目、とうとう、ハッキネンも、前を行く、ミハエル・シューマッハーのマシンを捕らえます。ハッキネンは、アデレイドヘアピンにて、シューマッハーの見せた、僅かな隙を突いて、交わすことに成功します。これは、ミハエル・シューマッハーのハンドリングミスによるものだったのかどうかは、分かりません。…というのも、この直後、ミハエル・シューマッハーのマシンは、スローダウンしてしまうからです。ミハエル・シューマッハーの車は、白煙を吹き、さすがに、本人もレースを断念し、車を止めてしまいました。信頼性の高いフェラーリマシンには珍しい、エンジントラブルでした。果たして、アデレイドヘアピンで起こった、ミハエル・シューマッハーの不穏な動きは、彼のハンドリングミスによるものだったのか、それとも、エンジントラブルによるものだったのか、私には分からずじまいとなりました。

 序盤戦では、圧倒的な勢いを見せたフェラーリも、中盤戦には失墜し、終盤戦ともなりますと、いつの間にか、マクラーレンのワン・ツー体勢へと変わり、そのまま、チェッカーフラッグを受けることになりました。優勝はクルサード。2位にハッキネン。フェラーリの圧勝とも思われたシナリオを、彼らは見事に書き換えることに成功しました。さすがのバリチェロも、マクラーレンの勢いを止めることは出来ず、3位表彰台が関の山でした。また、ヴィルヌーヴは、4位入賞と、今季最高の成績を収め、ホンダエンジンの素晴らしさをアピールしました。ホンダエンジンの表彰台入りも、そう遠くはないでしょう。

 マクラーレンのワン・ツー・フィニッシュにより、コンストラクターズ争いも、フェラーリとマクラーレンの差は、僅かに6ポイントと迫りました。ドライバーズ争いでは、ミハエル・シューマッハー56ポイント、クルサード44ポイントとなり、次のレース結果が楽しみとなってきました。次戦、F1グランプリ第10戦、オーストリア・グランプリは、7月16日に決勝戦がおこなわれます。