アルスラーン戦記 田中芳樹

 天野喜孝さんのイラストに惹かれて、思わず買ってしまいました。それだけに、表紙・イラストの効果は、大変に重要なものであると感じています。よく考えてもみれば、後述する「デルフィニア戦記」に至っても、とある本屋の平台に陳列された、沖麻実也さんのカバーデザインに惹かれなければ、あの素晴らしい作品に気づくことはなかったのかもしれません。そんな、ちょっと不順な動機で読み進めていくうちに、どんどんとのめり込んでしまったのです。ただ残念なのは、この物語は未だ完結していないのです。というよりは、むしろ進展さえしておりません。平成4年に第9巻を発刊して以来、続刊は途絶えているのです。もう、6年余りも続刊の気配のない今となっては、未刊のまま、諦めなくてはいけないのかもしれません。

 内容は、中世ペルシアによく似た異世界を舞台に繰り広げられる、ヒロイック・スペクタクル・ロマンです。味方の裏切りにより国を失った、アルスラーンという一人の王子を中心に、優秀な仲間たちと、王都の奪還を図ります。同じ著者の「銀河英雄伝説」と共に、権謀術数あふれる策略・謀略・毒舌?の仕掛けあいが見物です